1. 比較の前提:何をどう計算したか
最初に、この記事の計算方法をすべて開示します。前提が分からない比較表は信用できないからです。
| 対象 | ドル円(USD/JPY)1ロット=10万通貨、往復1回の取引 |
|---|---|
| 1pipの価値 | 0.01円 × 100,000通貨 = 1,000円 |
| 取引手数料 | 往復のUSD建て手数料を1ドル150円で円に換算 |
| キャッシュバック | TariTaliの1ロットあたりUSD建て還元額を、同じく150円で換算 |
| スプレッド値 | 各社が公表する平常時の参考値をもとにしたモデルケース |
円建てで計算しているのは、ドル円の場合そのほうが正確かつ直感的だからです。1pipが1,000円と決まっているため、為替レートの影響を受けるのはキャッシュバックと取引手数料の部分だけになります。
計算式そのものは1つだけです。詳しい導出は実質コストの計算方法をまとめた記事で解説しています。
実質コスト = スプレッド + 取引手数料 − キャッシュバック
2. 主要15口座の実質コスト一覧
計算結果です。安い順に並べています。
注目していただきたいのは、表の左端の列と右端の列で順位が変わっている点です。
「スプレッド+手数料」だけで見た場合の順位
左端の列だけを見ると、ThreeTrader Rawゼロ(455円)が最安で、IC Markets(1,000円)が続きます。XMは1,600円で、AXIORYスタンダードの1,500円より高い位置にあります。これが一般的なスプレッド比較記事に載っている順位です。
キャッシュバックを引いた場合の順位
ところが第3項を引くと様子が変わります。XMは還元額が1,275円と最も大きいため、実質コストは325円まで下がり、AXIORYスタンダード(862円)を大きく追い抜きます。順位で言えば、5位まで浮上します。
| 口座 | 手数料込みの順位 | CB控除後の順位 | 変動 |
|---|---|---|---|
| XM スタンダード | 13位相当(1,600円) | 5位相当(325円) | 大きく上昇 |
| AXIORY スタンダード | 11位相当(1,500円) | 最下位相当(862円) | 下落 |
| Exness スタンダード | 6位相当(1,100円) | 2位相当(50円) | 上昇 |
スプレッドの狭さで選んでいた人が、実際には高いコストを払っていたということが起こり得ます。逆に「XMはスプレッドが広い」と敬遠していた人が、キャッシュバックを含めれば十分に競争力のある水準だったということもあります。
3. なぜ還元額の大きさで選んではいけないのか
ここで一つ注意が必要です。「XMは還元額が最大だから最強」という結論にはなりません。表を見れば分かるとおり、XMより実質コストが安い口座が4つあります。
ThreeTraderの還元額は750円で、XMの1,275円より小さい数字です。それでも実質コストはThreeTraderのほうが低くなります。理由は単純で、もともと支払っているコストが455円しかないからです。同じ金額が戻るなら、支払いが小さいほど相殺の割合は大きくなります。
比較するときに見るべきなのは、還元額でも支払額でもなく差し引きの残りです。この視点を持つと、広告で強調されがちな「業界最高水準の還元率」という表現に振り回されなくなります。
4. 通貨ペアを変えると、順位はまた変わる
この記事の比較はドル円に限定しています。同じ業者でも、EUR/USDで比べると結果が変わるためです。
キャッシュバックはUSD建ての固定額
仕組みはこうです。キャッシュバックは「1ロットあたり8.5USD」といった固定額で支払われます。ところが1pipの価値は通貨ペアによって違います。
| 通貨ペア | 1pipの価値(1ロット) | 1.6pipsのコスト |
|---|---|---|
| ドル円 | 1,000円 | 1,600円 |
| EUR/USD | 10 USD = 約1,500円 | 約2,400円 |
同じ1.6pipsでも、EUR/USDのほうが1.5倍のコストになります。一方で還元額は同じ1,275円のままです。つまりpip価値が小さいドル円では、固定額の還元が相対的に強く効くという構造になっています。
結果として、還元額が大きい業者ほどドル円で有利になり、EUR/USDでは相対的に不利になります。ドル円をメインに取引している方と、ユーロドルをメインにしている方とでは、選ぶべき口座が変わり得るということです。
スプレッド比較の記事で「1.5pips」という数字を見たとき、それがどの通貨ペアのものかを確認してください。pips表示のまま金額の大小を語ると、通貨ペアが違えば5割近い誤差が出ます。この記事はすべてドル円・円建てで統一しています。
5. 年間の負担額に直す
1ロットあたり数百円の差は小さく見えます。年間に直してみます。
月30ロットを1年間続けた場合、最上位と最下位で年間40万円以上の差が生まれます。取引の手法も勝率もまったく変えずに生じる差です。
| 月間ロット数 | ThreeTrader(−295円) | XM(325円) | AXIORY標準(862円) |
|---|---|---|---|
| 10ロット | −35,400円 | 39,000円 | 103,440円 |
| 30ロット | −106,200円 | 117,000円 | 310,320円 |
| 60ロット | −212,400円 | 234,000円 | 620,640円 |
マイナス表示になっているのは、還元がコストを上回っている状態です。ただし後述するとおり、これは特定の前提のもとでの計算であり、常にこうなるわけではありません。
6. この比較の限界
数字を出した以上、どこまで信用してよいかも書いておきます。
限界1:スプレッドは固定値ではない
この比較では各社の平常時の参考値を使っています。実際のスプレッドは相場状況で変動し、指標発表の前後や早朝の流動性が低い時間帯には大きく開きます。その時間帯に取引が集中している方は、この表より高いコストを負担しています。
正確に知りたい場合は、ご自身の取引履歴に記録された約定時のスプレッドを使って計算し直してください。計算手順は実質コストの計算方法をまとめた記事にあります。
限界2:実質コストがマイナスでも勝てるわけではない
実質コストがマイナスに見えると、「取引すればするほど得をする」と考えたくなります。しかしキャッシュバックが相殺するのは取引コストだけで、相場変動による損失は相殺しません。エントリーの判断が悪ければ、コストがゼロでも資金は減っていきます。また還元だけを目的とした無意味な回転売買は規約上の問題になり得ます。通常の取引の結果としてコストが下がる、という理解にとどめてください。
限界3:条件は変更される
キャッシュバック率もスプレッドも、改定されることがあります。この記事の数値は執筆時点のモデルケースであり、口座を開設する前には必ず各社の公式情報とTariTaliの対応業者ページで最新値をご確認ください。
7. 結局どれを選べばいいのか
実質コストの順位は出ましたが、それだけで決めるべきではありません。取引スタイルによって優先順位が変わります。
| あなたの状況 | 候補 | 理由 |
|---|---|---|
| とにかくコストを下げたい | ThreeTrader / IC Markets | もともとのコストが低く、還元が効きやすい |
| ドル円が主戦場 | XM / Exness | 固定額の還元がpip価値の小さいドル円で強く効く |
| 短期売買が中心 | Exness | 短時間の決済でも還元が目減りしない |
| 少額から始めたい | XM / Exness | 最低入金額が低く、参入しやすい |
| ボーナスも欲しい | XM / FXGT / Vantage | 口座を分ければ両取りできる |
コスト以外の条件も含めた選び方は各社の個別記事にまとめています。ボーナスとの兼ね合いについてはボーナスとキャッシュバックを両取りする方法をご覧ください。
8. 順位を動かしているのは第3項
この記事の比較で順位を動かしていたのは、すべて第3項のキャッシュバックです。逆に言えば、キャッシュバックを受け取れる状態になっていない口座では、この項目は常にゼロのまま計算されます。
その場合、あなたの実質コストは表の左端の列そのままです。XMなら1,600円、AXIORYスタンダードなら1,500円を、1ロット取引するたびに負担していることになります。
キャッシュバックはIB(Introducing Broker=紹介業者)の仕組みで成り立っており、どのIBに紐づくかは口座を開設したときに経由したリンクで確定します。すでに開設済みの口座を後から対象にすることは、原則としてできません。仕組みの詳細はTariTaliの仕組みと評判を検証した記事で解説しています。
9. よくある質問
10. まとめ:第3項を入れると景色が変わる
- キャッシュバックを引くと順位が入れ替わる。XMは13位相当から5位相当まで浮上する
- 還元額の大きさで選ばない。還元750円のThreeTraderが、還元1,275円のXMより安い
- 通貨ペアで順位はまた変わる。pip価値が小さいドル円ほど固定額の還元が強く効く
- 年間では40万円以上の差(月30ロット)。手法も勝率も変えずに生じる
- コストが下がっても勝てはしない。変わるのは同じ成績のときの手取り
スプレッド比較の記事は数多くありますが、そのほとんどは第2項までで止まっています。第3項まで入れて計算し直すと、順位はここまで動きます。自分がどの列を見て業者を選んでいたのかを、一度確認してみてください。
計算式の詳細は実質コストの計算方法、口座タイプ単位での選び方はスタンダードとECNの比較記事、ゴールドを主に取引する方はゴールドの実質コスト比較へ進んでください。