1. 比較の対象が1つの層に偏っている
「海外FXは手数料が高い」という説明には根拠があります。ドル円のスプレッドを比べれば、国内FXが0.2銭前後であるのに対し、海外FXは1銭を超えることが珍しくありません。数字としては明らかな差です。
ただし、この比較は特定の層だけを見ています。両者の違いは3つの層に分かれているからです。
①の取引コストは数値で表せるため、比較記事の中心になります。②の税は別の記事として扱われることが多く、③の資金効率は「高レバレッジは危険」といった感覚的な話に流れがちです。
この3つは、決まり方がまったく違います。取引コストは月間のロット数で、税は課税所得で、資金効率は証拠金の額で決まります。混ぜて「総合的にどちらが得か」と問うと、答えが出せません。それぞれ別々に判定する必要があります。
2. 第1層:実質コストで並べ直す
まず取引コストから見ます。ここで重要なのは、比較に含める項目です。
国内FXの取引コストはスプレッドがほぼすべてです。一方、海外FXにはキャッシュバックという要素があります。この項目は国内FXには存在しないため、比較表には載りません。
還元を差し引くと、国内FXの200円を下回る海外FX口座が3つ現れます。ThreeTraderにいたっては、還元がスプレッドを上回るため実質コストがマイナスです。取引するほど戻る計算になります。
もちろん、これは還元を受け取っている場合の話です。受け取っていなければ、往復コストの列がそのまま実質コストになります。1,000円から1,600円と、国内FXの5倍から8倍です。「海外FXは手数料が高い」という主張は、この状態を指しています。
XMのスタンダード口座は、還元なしなら1,600円、還元ありなら325円。取引の中身はまったく同じで、口座を開いたときのリンクが違うだけです。片方は「国内FXの8倍」、もう片方は「国内FXの1.6倍」。同じ口座の話とは思えない差になります。
3. 第2層:税は所得の規模で入れ替わる
次に税です。ここは制度の違いがはっきりしています。
国内FXは「先物取引に係る雑所得等」として申告分離課税が適用され、税率は一律20.315パーセントです。利益がいくらでも変わりません。
海外FXは総合課税の雑所得として扱われます。給与などほかの所得と合算され、所得に応じて税率が上がる仕組みです。
目安として、課税所得330万円あたりが分かれ目になります。それより低ければ海外FXが不利になりませんが、超えると国内FXの一律20.315パーセントのほうが軽くなります。
国内FXには損失を翌年以降に繰り越せる制度がありますが、海外FXの損失は繰り越せないとされています。年によって損益の振れが大きい人ほど、この差が効きます。個別の判断は税務署または税理士にご確認ください。
なお海外FXのキャッシュバックも雑所得として扱うのが一般的な考え方です。詳しい扱いは確定申告のガイドと申告手順の記事で扱っています。
4. 第3層:資金効率は規模で意味が変わる
3つめの層は、手数料の表に現れない部分です。
| 項目 | 国内FX | 海外FX |
|---|---|---|
| レバレッジ | 25倍が上限 | 大きく上回る設定が可能 |
| 必要な証拠金 | 同じロットでも多く必要 | 少なく済む |
| 証拠金を超える損失 | 追加で支払う必要が生じ得る | ゼロカットを採る業者が多い |
| ボーナス | 基本的にない | 入金ボーナス等がある |
この層は、資金が小さいほど意味を持ちます。証拠金が10万円の人にとって、同じロットを扱うのに必要な資金が半分で済むかどうかは大きな違いです。一方、証拠金が1,000万円ある人には、レバレッジの上限が制約になる場面は多くありません。
ゼロカットについては、コストの計算に現れない項目です。想定外の急変が起きたときに、証拠金を超える負担が生じるかどうかという違いなので、平常時の比較には出てきません。それでも判断材料としては重要です。
5. 3層を合わせるとどうなるか
ここまでの内容を、判定の形にまとめます。
この表を見ると、答えが人によって変わる理由がわかります。3層すべてで同じ結論が出る人は多くありません。
| 状況 | 3層の判定 |
|---|---|
| 課税所得が低く、資金も小さい | ①②③すべて海外FX寄り |
| 課税所得が高く、資金も大きい | ②③は国内FX寄り。①は還元しだい |
| 課税所得は高いが、取引量が多い | ①は海外FX、②は国内FX。金額を比べて判断 |
3行目のようなケースでは、実際に金額を出して比べるしかありません。取引量が多ければ①の差が年間数十万円規模になり、②の税率差を上回ることもあります。逆に取引量が少なければ、②の差が支配的になります。
6. 自分の数字で計算する手順
判定に必要な数字は3つだけです。
- ① 月間の取引ロット数(過去の取引履歴から合計する)
- ② 給与を含む課税所得(源泉徴収票などで確認する)
- ③ 証拠金として使える金額
①を実質コストの表と掛け合わせれば、年間の取引コスト差が出ます。月10ロットでExness(実質50円)と国内FX(実質200円)を比べるなら、差は月1,500円、年間18,000円です。
月30ロットならこの差は年間54,000円になります。一方、還元を受け取っていないXMと国内FXを比べれば、月30ロットで年間の差は504,000円。還元の有無が、結論を左右する規模で効いてきます。
XM還元なし1,600円と国内FX200円の差は1ロットあたり1,400円。月30ロットなら月42,000円、年間504,000円です。還元ありのXM(325円)なら差は125円、年間45,000円まで縮まります。同じ口座で、10倍以上の開きです。
7. 入出金にかかる費用も見ておく
第1層に含めるべきもうひとつの項目があります。入出金の費用です。
| 国内FX | 海外FX | |
|---|---|---|
| 入金 | 無料のことが多い | 手段による |
| 出金 | 無料または安価 | 費用がかかる場合がある |
| 為替の変換 | 発生しない | 通貨によっては発生する |
この項目は取引の回数ではなく、入出金の回数に比例します。頻繁に出金する運用なら無視できませんが、年に数回であれば影響は限定的です。自分の運用パターンに合わせて評価してください。
なお、この費用も取引コストの一部として実質コストの計算に含める考え方があります。計算の枠組みは実質コストの計算方法で扱っています。
8. 「高い」という主張が成り立つ条件
ここまでの整理を踏まえて、最初の主張に戻ります。
「海外FXは手数料が高い」は、次の条件がそろったときに正しくなります。
- キャッシュバックを受け取っていない
- 比較対象がスプレッドの広い口座タイプ
- 取引コストの層だけを見ている
3つとも満たしていれば、主張は事実です。実際、還元を受け取らずにスタンダード口座で取引している人にとって、海外FXのコストは国内FXの5倍から8倍になります。
逆に言えば、1つめの条件を外すだけで結論が変わります。還元は口座を開くときのリンクで決まるため、登録して口座を作れば以後の取引すべてに適用されます。取引の中身も、手法も、業者も変える必要がありません。
9. よくある質問
10. まとめ:一般論では答えが出ない
- 差は取引コスト・税・資金効率の3層に分かれる
- 還元込みの実質コストなら、国内FXを下回る口座がある
- 税の分かれ目は課税所得330万円あたり。所得で入れ替わる
- 資金効率は資金が小さいほど効く。大きいと制約にならない
- 3層すべてで同じ結論が出る人は多くない
海外FXと国内FXの比較記事は、たいてい「こういう人には海外FX、こういう人には国内FX」という形でまとまります。その分け方自体は妥当ですが、判定の根拠が第1層に寄りがちです。
そして第1層は、還元を含めるかどうかで結論が反転します。含めない比較は、片方の選択肢の機能を半分外した状態で行われていることになります。
自分の取引量でいくらの差になるかは、サイドバーの計算機で試算できます。年間の取りこぼし額は取引コスト計算ツールで確認してください。税務の判断については、必ず税務署または税理士にご相談ください。