1. 「回数を減らせ」が当てはまる場合とそうでない場合
取引回数が多いことを相談すると、返ってくる答えはほぼ決まっています。無駄なエントリーをなくしなさい、量より質を意識しなさい、1日の上限を決めなさい。
条件を満たしていない取引が多いなら、この助言は正しいものです。優位性のない場面で入れば勝率は下がり、コストだけが積み上がります。
ただし、すべての回数が同じ性質を持つわけではありません。
回転数の高さが設計に組み込まれている手法があります。小さな利幅を数多く積み上げる型では、回数を減らすことは手法そのものを壊すことと同義です。
条件を満たさない取引に対する打ち手は「回数を減らす」です。ところが戦略上必要な回転に対する打ち手は「コスト構造を整える」になります。切り分けずに前者の助言を適用すると、正常に機能している手法を止めることになります。
2. 2種類の回数を切り分ける
自分の回数がどちらなのかは、取引履歴から判定できます。
| 確認すること | 判定 |
|---|---|
| エントリーの根拠を書けるか | 書ける取引が大半なら、戦略上必要な回転 |
| 直前の取引の直後に入っていないか | 連続していれば、感情による取引の可能性 |
| 時間帯が偏っていないか | 条件と無関係な時間に集中していれば要確認 |
| 損失の直後にロットが上がっていないか | 取り返そうとする判断が入っている |
最も簡単なのは1行目です。過去の取引を10件ほど選び、それぞれになぜ入ったのかを書き添えてみてください。書けない取引が、減らすべき回数です。
この作業は回数を減らすためというより、原因を特定するために行います。半分以上が書けないなら規律の問題、ほとんど書けるならコスト構造の問題ということになります。
3. 回転数が高いほど、改善額は大きくなる
戦略上必要な回転だと判定できた場合、打ち手はコスト側にあります。そしてここで、回転数の高さが逆に働きます。
還元なしの16 USDから、還元込みの実質4.0 USDへ。比率としては4分の1で、これは取引量に関係なく同じです。
ところが金額の絶対値はまったく違います。月10ロットなら年間216,000円ですが、月100ロットなら年間2,160,000円。10倍の開きがあります。
「回数が多いから損している」という指摘は、コスト構造を整えていない状態については正しい。しかし裏を返せば、回転数が高い人ほど、整えたときに戻ってくる金額が大きいということです。優先度が最も高い層とも言えます。
4. 平均利益幅に対する比率で見る
もうひとつ、回転数の高い手法に特有の観点があります。1回あたりの利幅とコストの関係です。
1回で10 pipsを取る手法なら、往復1.6 pipsのコストは16パーセント。それほど重くはありません。ところが1回で3 pipsを取る手法では53パーセント、2 pipsなら80パーセントです。
取ってきた利益の大半がコストで消えるという状態になります。これが「回転数の高い手法は勝ちにくい」と言われる構造的な理由です。
そして還元を入れると、この比率が半分以下になります。2 pipsの手法なら80パーセントから37.5パーセントへ。手元に残る幅が0.4 pipsから1.25 pipsへ、3倍以上になります。
利幅が小さいほど、コストの改善が成績に直結します。ロジックやエントリー条件を1ミリも変えずに、手元に残る幅を3倍にできるのは、この層だけです。詳しい試算はスキャルピングの実質コストの記事で扱っています。
5. 還元は取引を増やす理由にならない
ここで、重要な歯止めを置いておきます。
還元の存在を知ると、「取引すれば戻ってくるなら回数を増やしてもいいのでは」という発想が出てきます。これは成り立ちません。
還元は必ず取引コストを下回ります。1ロット追加すれば16 USD払って8.5 USDが戻るので、差し引き7.5 USDのマイナスです。取引を増やせば増やすほど、資金は減ります。
還元が変えるのは、行う予定だった取引のコストです。行う予定のなかった取引を正当化するものではありません。この区別を外すと、還元がポジポジ病の言い訳になります。
まずエントリー条件を満たしているかで判断し、そのあとにコストを計算する。順番を逆にすると、還元があるからという理由で条件を緩めることになります。還元は判断の材料ではなく、決まった取引に自動的に適用されるものだと考えてください。
6. 回転数が高い人が確認すべき規約
コスト構造を整えるにあたって、先に確認しておく項目があります。
| 確認項目 | 内容 |
|---|---|
| スキャルピングの可否 | 認めている業者が多数派だが、制限している業者もある |
| 口座タイプごとの扱い | 同じ業者でも口座タイプで条件が違う場合がある |
| 保有時間の制限 | 極端に短い保有に制限が設けられていることがある |
| 自動売買の可否 | 高回転を自動化する場合は必ず確認する |
回転数が高いほど、規約に触れる回数も多くなります。1回の違反で済まず、履歴に大量に残る点が高回転手法の特徴です。条件は変更されることがあるため、必ず公式の規約で最新の内容をご確認ください。
7. 実行の手順
ここまでの内容を、順番にまとめます。
- ① 取引履歴でエントリーの根拠を確認する。2種類の回数を切り分ける
- ② 総ロット数から年間コストを計算する。改善余地の大きさがわかる
- ③ 規約を確認する。スキャルピングと口座タイプの扱い
- ④ 還元を確保してから口座を開く。順番は変えられない
④について、構造上の注意があります。キャッシュバックはIB(紹介業者)の仕組みで成り立っており、どのIBに紐づくかは口座を開設したときに経由したリンクで確定します。すでに持っている口座を後から対象にすることはできません。
同じ業者を使い続ける場合でも追加口座を作る形になります。既存口座はそのまま残しておいて問題ありません。手順は自動リベートの記事にまとめています。
8. 減らすべき回数が多かった場合
切り分けの結果、条件を満たさない取引が多かった場合の話もしておきます。
この場合はコスト改善だけでは足りません。ただし、コスト改善をやらない理由にもなりません。
| 判定 | やること |
|---|---|
| ほとんどが条件を満たす取引 | コスト構造を整える。回数は維持する |
| 半々 | 条件を満たさない分を減らし、残りのコストを下げる |
| 半分以上が条件を満たさない | 規律の立て直しが先。並行してコストも下げる |
3行目でも、コスト改善は同時に進める価値があります。規律を立て直したあと、コストが高いままなら同じ壁にぶつかるからです。
そして規律の問題が絡んでいる場合、その多くは損失を取り返そうとする心理から生じます。この点については損失を取り返す前に読む記事で扱っています。
9. よくある質問
10. まとめ:回数の性質で打ち手が変わる
- 回数には戦略上必要なものと、そうでないものがある
- 必要な回転への打ち手はコスト構造の側。減らすと手法が壊れる
- 回転数が高いほど改善額の絶対値が大きい。月100ロットで年216万円
- 利幅が小さいほどコストが成績を支配する。改善効果も大きい
- 還元は取引を増やす理由にならない。必ずコストを下回る
取引回数の多さは、それ自体が問題とは限りません。問題になるのは、条件を満たしていない取引が混じっている場合と、コスト構造を整えていない場合です。
そして後者については、回転数が高いことがそのまま改善余地の大きさになります。同じ手法、同じ回数、同じタイミングのまま、年間で数十万円から数百万円が変わる層です。
自分の取引量でいくらになるかは、サイドバーの計算機で試算できます。年間の取りこぼし額は取引コスト計算ツールで確認してください。